ストレスに苦しむ感情労働者たち
接客業者や医療・介護従事者、教師などの仕事に就く人々は、立場上、自分の感情を押し殺し、相手の感情に寄り添う感情労働を強いられます。こうした人々は、感情労働者とも呼ばれ、業務中は相手に不快感を与えない表情や態度を保つことが重視されます。そのとき感情労働者の内面では、本当の感情が押し潰され、大きなストレスが生じています。
感情労働で生じるストレスやプレッシャーは、自身を見失う原因になります。感情をコントロールしなければならない環境に長く身を置くことで、心が疲れ切り、本来の感情が動かなくなってしまうことも珍しくありません。日本社会では、誰かのために自分を犠牲にすることが、どれほど心に負担をかけるのか理解されていない現状があります。感情労働者の多くがそのストレスに苦しんでおり、対人サービス業の離職・人手不足の原因にもなっています。
感情労働のきつさは、感情のストレスが仕事以外にも響くところにあります。よほど心の切り替えがうまくない限り、職場で抑えていた感情は、帰宅後に一気に溢れ出してしまう傾向にあります。これが続けば日常生活にも支障をきたし、家族や友人との関係が悪化することもあるでしょう。もし感情を抑えきれない状態になったら、きちんと休息を確保し、誰かに気持ちを打ち明ける場を持つことが大切です。心に溜め込んだネガティブな感情は、外に吐き出すことで軽くなります。感情のコントロールは、独自のやり方ではなかなか難しいため、ぜひ感情労働の仕事を乗り切るコツを頭に入れておきましょう。
私たちは感情労働者たちの苦悩を理解し、彼らが抱える問題に気付く必要があるでしょう。一度、接客サービスやおもてなしの在り方を見直し、顧客・スタッフの双方が快適に過ごせる社会をつくるべきです。立場関係なく、一人ひとりの感情を尊重できる社会を作ることこそが、誰もが働きやすい環境になるカギだと思っています。顧客とスタッフの関係性が改善され、ストレスに押し潰される感情労働者がいなくなることを、心から願っています。